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仙台高等裁判所 昭和38年(う)231号 判決 1963年12月23日

主文

本件控訴を棄却する。

理由

本件控訴趣意は、仙台地方検察庁検察官検事柏木忠名義の控訴趣意書の記載と同じであり、これに対する答弁は弁護人渡辺大司名義の答弁書の記載と同じであるから、いずれもこれを引用する。

控訴趣意第一(事実誤認または法令の解釈の誤り)について、

原判決は、本件公訴事実第一の、被告人が無免許で、一般交通の用に供するその他の場所である本件現場で、大型貨物自動車を運転したという訴因につき、「一般交通の用に供するその他の場所」とは一般公衆が自由に通行することができ、少なくとも道路的機能を営んでいる場所をいうものと解し、被告人の運転した本件現場はこれと該当しないから、本件公訴事実第一は罪とならないとして無罪を言い渡した。これに対し論旨は、現に不特定多数人並びに車両等の交通の用に供されている場所である以上、同所が一般公衆に無条件に解放されていることも、不特定の一般多数人が無制限に通行できることも必要でないとし、本件現場は現に不特定多数人並びに車両等の通行に供していることが明らかであるから、「一般交通の用に供するその他の場所」に該当し、したがつて原判決は事実を誤認したか、法令の解釈を誤つたものであると主張する。しかし道路交通法二条一号にいわゆる「一般交通の用に供する場所」とは、それが一般公衆に対し無条件で開放されていることは必ずしもこれを要しないとしても、道路交通法一条の道路における危険を防止し、交通の安全と円滑を図るという目的に照らし、現に一般公衆および車両等の交通の用に供されているとみられる客観的状況のある場所であつて、しかもその通行することについて、通行者がいちいちその都度管理者の許可などを受ける必要のない場所をいうものと解するのが相当である。ところで、記録および当審における事実取り調べの結果によれば、被告人が本件貨物自動車を運転した場所は、原判決も認定しているとおり、宮城県経済農業協同連合会長町業務所の構内であつて、同業務所は、事務所のほか七棟の各種倉庫および一棟の農機具修理工場があり、これらの建物は周囲をコンクリート塀で囲繞され、その西側に設けられた市道に面する正門一ケ所だけが日中の午前八時三〇分から午後五時までの間開扉されているので、同構内への出入りはすべて右正門を通るよりほかなく、外部にいわゆる通り抜けはできない。そして被告人の本件運転した場所は、右正門から七―八〇米同構内の最も奥で、西側は資材倉庫に接続する砂糖詰替場、北東、南には四棟の各種倉庫があり、大体においてこれらにかこまれたいわゆる倉庫前の広場であつて、同所には日中正門が開扉されている間限られた自動車が貨物の積み降ろしのため出入するに過ぎない。しかも外部から構内に入る自動車は、まず正門から入つてすぐ右側にある事務所で許可を受けなければならないことが認められるので、かかる場所、前示基準に照らし、前記法条にいわゆる「一般交通の用に供するその他の場所」にはあたらないものというべく、これと同旨に帰する原判決は正当であつて、原判決には所論のような違法は認められない。論旨は理由がない。(その余の判決理由は省略する。)(裁判長判事斎藤寿郎 判事斎藤勝雄 杉本正雄)

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